そこで、今回提出された計画案の内容や、今後の手続の流れについて、少し詳しくご説明していきたいと思います。
そもそも更生計画案って?
会社更生手続は、今ある借金を返済できる額にまで小さくすることで、会社の更生(=再生)を図る手続です。
ただ、会社に対して権利を持っている人、すなわち債権者からすれば、持っている権利が少なくなってしまうわけですから、なんの理由も無しに「借金を割り引け。」と言われても納得はできません。
そこで、「今会社にある財産はこれだけです。この財産をこのようにして債権者に支払っていきます。その上で、こうして会社を立て直します。」という計画を作り、債権者がその計画で納得できれば手続を進める、というようにしています。この計画が、「更生計画」であり、債権者に了承をもらうまでのものを「更生計画案」といいます。
更生計画案には、現在会社が持っている財産や抱えている借金の額、債権者に対する返済の額(率)や時期などが盛り込まれています。債権者にとってみれば、更生計画案が了承されれば、まさに計画案に沿って返済を受けるわけですから、とても重要なものであると言えるでしょう。
武富士の更生計画案
それでは武富士の更生計画案を見ていくことにしましょう。
まず、発表時点で武富士が保有している財産の総額は、お金に換算できないものを除いて約220億円とのことです。これは東日本大震災の影響もあり、大幅に下落してしまった旨の発表がありました。
さらに、武富士の貸金業部門は韓国の金融会社であるA&P社が、スポンサーとなって引き継ぐ事になっていますが、このA&P社からは貸金業部門を引き継ぐ対価として、280億円の資金提供がある模様です。
この両者を合わせた約500億円が、武富士が債権者に返済をする元手になるものです。
反対に、武富士が抱えている借金は、過払金も含めておおよそ1兆5000億円とのことです。
そして、元手の500億円からこの1兆5000億円に対して返済がされますので、返済率は3.3%となります。
例えば、武富士に対して100万円の過払金を持っている債権者の場合、更生計画で返済されるのは100万円のうち3万3000円であるということです。
ただ、この3.3%という数字はあくまで「発表時にお金に変えることのできた財産を元にした数字」であって、今後お金に変えることのできる財産は含まれていません。武富士は、発表後にお金に変えることのできた財産を元手に、第2回目の返済をする予定だ、としています。
そして、この3万3000円がいつ返ってくるかというと、発表によれば平成23年12月から平成24年11月までの間であるとのことです。今回の手続は、債権者が91万人にも上る大規模なものであることから、具体的な返済時期を決めることが現段階ではできないようです。第2回目の返済については、時期すら決まっていません。更に言えば、返済自体がないかもしれません。
今後の手続
現在債権者には、武富士から更生計画案と、更生計画案に対する賛否を問う書面が郵送されています。債権者は、更生計画案を確認し、更生計画案に賛成するか、反対するかを投票することになります。投票の締切は平成23年10月24日です。
投票が締め切られたあと、債権者の投票を集計し更生計画案を了承するかどうかが決められます。了承するためには、更生債権額の半数以上の賛成が必要(その他の要件もありますが、ここでは省略します。)です。投票しない場合は、更生計画案に賛成しないものとして扱われますので、注意が必要です。
更生計画案が了承された場合
更生計画案が了承されれば、債権者には更生計画に沿った返済がされます。そのかわり、3.3%(第2回目の返済があった場合はその部分も含む)を除いた部分は、あとから請求することはできなくなってしまいます。
更生計画案が了承されなかった場合
更生計画案が了承されなかった場合、または了承はされたがその他の理由で計画が頓挫してしまった場合には、更生手続は終了となります。
更生手続終了後の武富士は大きな信用不安を抱えた状態となりますので、十中八九は破産手続に移行するものと思われます。
債権者は、更生手続ではなく破産手続で返済を受けることになりますので、それほど手続自体はかわりません。ただ、上で述べたスポンサーからの資金提供はなくなってしまいますので、返済率は更に低下してしまいます。武富士の発表によれば、破産手続での返済は債権額の1.92%になってしまう模様です。
どうすればよいか、ひとつの考え
では 果たして武富士の示した「返済率3.3%」というのは妥当な数字なのでしょうか。
今回の更生手続では、一部の債権者から返済率を16%超とする更生計画案も提出されていました。しかし、裁判所は16%超の更生計画案を「実現可能性が乏しい。」という理由で退けています。その点からすると、武富士が作成した3.3%という数字は現時点では最も妥当な数字に近いものと言うことができるでしょう。
その上で更生計画案への賛否をみると、反対して破産手続に移行するより、賛成して更生手続で返済を受けた方が、より多くの返済を受けることができます。
もちろん、破産手続での返済率はあくまで武富士発表のものですので、低く見積もっている可能性は捨て切れません。しかし、破産となると資産価値は劣化するのが通常です。今後破産手続に移行した場合に更に時間がかかることを考えると、3.3%より劇的に返済率が増える可能性は低いものと考えられます。
ただ、今回は創業者一族に多額の税金の還付金があったり、経営陣の経営責任が問題となっていたり…と未解決の問題も残されています。
このような中で、経営陣の経営責任を追求する損害賠償請求訴訟を起こす動きがあるようです。返済率や更生計画自体に納得のいかない方は、この訴訟に加わるという方法もあるのではないでしょうか。
今後の展開
今は、債権者が更生計画案を確認し、更生計画案に賛成するか、反対するかの投票を行っている段階です。この投票は平成23年10月24日に締め切られ、集計に回されます。早ければ、10月の終わりには更生計画案が了承されて更生手続が進むか、反対に了承されずに破産手続に移行するかが分かる模様です。
当事務所でも、今後の動きを注視していきたいと思っています。
以上




